自身の力を地域で生かす仕事と暮らし

先輩として移住希望者を導く

海が近い山・森が近い量販店が近い狩猟に携わる起業(農家民宿含む)自然の中で子育て教育機関(小・中)が比較的近い芸術・創作活動ができる自分でつくり・育てる(野菜・米)高速インターネット(光回線)が使える

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支え合う関係に

あなたが移住を考えている土地。そこに対して最初に感じたものを思い出してみてください。「好き」という感情が、もしかしたらあったかもしれません。それはとても大事なことです。いろいろと緻密に組み立てた計画よりも、心が踊る「好き」という感情は、時に物事を大きく動かします。休日にふらりと訪れた土地の風景が、なんとも言えず心地良く、そこで行う釣りや狩猟や米づくりが楽しくてたまらなかったとき、思いきってその土地にどっぷり浸ってみる。地域の人たちとも構えすぎず自然体で。そうして地域の方々と付き合っていくうちに、その場所はより一層好きになってくるものなのかもしれません。そうして住んでいる地域が自分にとって大切な場所になったのなら、その地でぜひ、自分の「得意」を活かしてみてください。あなたにできること、あなたにしかできないこと、その土地やそこに住まう方々にとっても役立つことがきっとあります。住んでいる土地とあなた、そしてそこに住む人々が、お互いを支え合う関係になる。それはきっと、新しいたくさんの「好き」をあなたにもたらしてくれるかもしれません。

垣内忠正さん
現在のお住まい京都府福知山市
移住前のお住まい兵庫県
お仕事ジビエ狩猟、経営者
年齢55歳

夢の暮らしに向かって

「真っ暗なんですよ、田舎の夜は。隣の家に行くのに懐中電灯を持って行かないといけない。けれど夏になると、近くを流れる川に沿ってホタルが飛んでいて、川の形がホタルでわかる。それには感激したなあ。あと、中山間地域に住むと、山に囲まれているから、朝日が見えるのは遅いし、夕陽が落ちるのは早い。空がちょっとしか見えないけれど、そこが満点の星空で、一晩中見えた流れ星は、得も言われぬようなすばらしい景色なんですよ。」

不便なところもある。しかし、それ以上にかけがえのないものが、田舎にはあります。

「僕が移住したのは、27歳の頃でした。」

と遠い目をする垣内忠正さんは、現在、奥様と猟犬とともに暮らしています。今や孫を持つほどに歳を重ね、ゆっくり時間をかけて田舎に根を下ろしたその姿は、移住者というより地元の方のような風格が漂っています。

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垣内さんが移住してきたのは、バブル期の真っ只中。多くの日本人が不夜城のような都会で勝負しようと盲信していた頃、垣内さんはあえて田舎暮らしを選び、当時住んでいた兵庫県を飛び出しました。

「私は言ってみれば“田舎暮らし”の走りなんですね(笑)。当時の田舎暮らしの参考資料といえば、創刊したばかりの『田舎暮らしの本』という雑誌くらいで、まだ『移住』という発想自体なかったんです。その頃はリタイアした人が田舎に住むことが主流で、若い人間が来ると、都会で何かやらかして逃げて来たんじゃないかと怪しまれることのほうが多かった。」

と、垣内さんは当時を思い返して笑います。

そんな状況で、なぜ田舎への移住を志したのかを尋ねると、懐かしみながら笑顔で答えてくれました。

「アメリカのドラマにありそうな、猟犬を家の中で飼い、玄関を開けたらすぐに大好きな狩猟が出来る。そんな夢を持っていたんです。まだ27歳で若かったし、夢と希望で突っ走りました。」

 

水道を引くところから始めた生活

思い描いた夢への道は困難を極めたと言います。当時は田舎の土地や物件を扱う不動産業者が数少なく、ようやく見つけた土地も、バブルの影響で値段が高騰。理想の地を求めて北上していった垣内さんは、やっとの思いで福知山市の移住先にたどりつきます。しかし、待ち受けていたのは、水道を引くことから始めなければいけないという現実でした。

「最近は田舎と言っても、大抵は電気、ガス、水道が整備されているでしょう。それに比べると、ライフラインを自分で整備していかなければならない当時の話は、にわかに信じがたいかもしれません。」

何事も道を切り拓くのは大変なこと。田舎暮らしへの道も並大抵のものではなかったと言います。なんとか生活環境を整え、念願の狩猟が出来るようになったものの、すぐに稼ぎになったわけではありませんでした。垣内さんは、生計を立てるために仕事を辞めず、毎日兵庫への片道55キロの道のりを通勤していたそうです。朝4時に家を出るサラリーマン生活は、傍から見れば困難なものに思えますが、垣内さんは特に不満もなかったと言います。

「狩猟期間は、11月から2月のわずか4ヶ月。短いですが、その季節を楽しむために、一生懸命働くことは苦ではなかったですね。猟犬も多いときで五、六匹飼ったりもしていましたし、夢に向かって着実に進んでいることを実感出来ていましたから。」

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田舎の魅力と、そこで生活を続ける大変さを身に染みて感じてきた垣内さん。自身の経験を活かし、移住を夢見る後輩たちをナビゲートするため、地域の方と移住者の橋渡し役を担う会社「アートキューブ」を設立しました。現在は、狩猟を続けながらも、不動産物件の紹介から古民家のリフォーム、田舎暮らし講座や農業体験ツアーまで、幅広い事業を通じて移住者のサポートをしています。

垣内さんは最後に、後輩たちへのアドバイスを語ってくれました。

「せっかく移住を考えるなら、やり遂げてほしい。今は賃貸で住む方も多いですが、僕のように家を買うと、後戻り出来なくなる。それくらいの信念を持って来ると土地の人も応援してくれますよ。」

田舎への移住は、新たに移り住む方の話になりがちですが、元々住んでいる方たちにも大いに関わること。時として、移住者側の想いの強さが、迎え入れる側の気持ちを変えることもあるそうです。

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