先人の想いを継ぎ繋げる暮らし

漆に魅せられて

海が近い山・森が近い量販店が近い起業(農家民宿含む)自然の中で子育て芸術・創作活動ができる自分でつくり・育てる(野菜・米)高速インターネット(光回線)が使える

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過去から未来へ繋ぐ

米野菜、味噌、醤油といったどの家庭でもあたりまえに作られてきた食べものも、大切に手入れしながら先祖代々住んできた立派な家や家具、建具も、子どもの笑い声が聞こえるあぜ道や畑に山も、自然の恵みに感謝しながら何ひとつ無駄にしようとしない手仕事の精神や知恵、技術も、そのすべてがこれまで地域で子や孫へ脈々と受け継がれてきた暮らしのかたちです。手間のかからない便利な生活ができる現代。その当たり前だった暮らしの様子が移ろい行くなかで、自ずと受け継がれなくなった先人たちが繋いできたバトン。知らず知らずのうちにどんどん失われていくバトンに価値や魅力を感じ、ひとつでも拾いあげ、大事に握り締め、そして次の世代へ渡していくことは、いまを生きる人にしかできない尊さを感じます。これまで紡いできた暮らしを受け継ぎ、豊かさと愉しさを感じながら暮らしていくことは、そこに暮らす先人たちから、今まで知らなかったわくわくするような新しいことを学ぶことなのかもしれません。

竹内耕祐さん
現在のお住まい京都府福知山市
移住前のお住まい富山県
お仕事漆掻き職人
年齢28歳

伝統を失ってはならない

伝統工芸に欠かすことのできない塗料である漆。京都府福知山市夜久野町は、1300年もの歴史を誇る丹波漆の代表的な生産地として知られています。その漆に魅せられて移住してきた竹内耕祐さん。漆の木の栽培から原料となる樹液の採取までを行う「漆掻き職人」の一人です。

竹内さんは、学生時代、富山県の大学で美術を学んでいたことがきっかけで漆工芸に興味を持ち、調べていくうちに漆自体の生産者が減っていることに気づきました。この伝統が失われてはならないと考え、自身が漆を採取する漆掻き職人になろうと決意します。

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「自然から出来た塗料である漆は、化学塗料とはまるで違う味わいがあるんです。でも、その原料作りに従事する人が圧倒的に少なくなってきている。そこで自分に何が出来るのか、色々と考えた結果、思いきって漆掻きをやってみることにしたんです。もちろん、最初は不安もありました。山の中での仕事や、その近くでの暮らしは初めてですし、漆の栽培もやったことがなかったですから。土をいじる経験すらなかった僕が、馴染める自信は正直なかったですね(笑)。」

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困難にも前向きに

竹内さんは、NPO法人丹波漆の協力を得て、工房として使える広さをもつ二階建ての家を借り、丹波に残る数少ない漆掻き職人の岡本嘉明さんの元で修業を始めます。

「師匠のやり方を見て、知識や技術、コツを学んでいます。最初はスコップの持ち方からダメ出しをされましたが、今では草刈りなんかは師匠に負けないくらい出来るようになりました。早く技術を継承できるようになりたい。」

と、竹内さんは意欲的です。

また、漆栽培だけでなく、夜久野町での体験は何もかも初めてのことばかり。竹内さんは、町でのあらゆる経験が、新たな視点を授けてくれたと言います。

「以前住んでいた住宅街では近所付き合いがなかったのですが、ここでは神社やお寺の行事に参加するようになって、共同作業の楽しさを味わっています。消防団にも入りましたし、同じ村で生活している人と同じ時間を過ごすことは豊かなことだと気づきました。」

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一方、夜久野町も、初めての移住者として竹内さんを迎え入れましたが、地域の方たちは皆、とても温かく受け入れてくれたそうです。それを象徴する話として「こっちに来てから米をほとんど買っていないんです。」と、竹内さんは笑顔で教えてくれました。採れたものを分け合ったり、持ち物を貸したりする田舎ならではの慣習。その恩恵を受けた竹内さんも「何か返したい」と思い、自宅の一階を開放して漆掻きの体験を出来るようにしています。

「実のところ、漆掻きだけで生計を立てることはなかなかに困難です。でも、目的と希望があれば、何とかなります。」

と、たくましく話す竹内さん。移住後に結婚した奥様と地元の方たちに支えられながら、竹内さんの言葉は京都の伝統を守る気概に満ちていました。

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