【自然と共にあるナリワイと暮らし「宮津市上世屋」:小山愛生さん、有美恵さん】

2020.09.03 インタビュー
  • この記事をはてなブックマークに追加

今回は京都府北部、宮津市の上世屋(かみせや)集落に移住された小山愛生(ひでき)さん、有美恵(ゆみえ)さんからお話を伺いました。

▲右から小山有美恵さん、愛生さん、そして上世屋へ移住してビールブルワリーを構想中のご夫婦。旧公民館を改装した移住体験施設「セヤハウス」の前で。

愛生さんは前職の新聞記者の仕事を通じて、有美恵さんはNGOを通じて、上世屋と出会い、自然と共に生きる村の人たちの暮らしに憧れ、惚れ込み、2014年にご家族で上世屋に移り住んできました。

上世屋では、無農薬のお米作りを体験できる「棚田をナリワウ学校」や、共に働き、共に暮らしながら地域での暮らしをイメージしていける「村人になるインターン」など、移住希望者に向けたユニークなプロジェクトを行っています。その中心メンバーとして活動している小山ご夫妻から、プロジェクトの背景やナリワイ、上世屋で生きる魅力や想いをお伺いしました。

宮津市上世屋は、京都府北部・丹後半島の中央部に位置する山間の集落。これぞ日本の原風景というような景色が広がっています。伝統的な造りの民家を中心に美しい棚田が広がり、昔ながらの暮らしが今も受け継がれています。
現在は地域内全12世帯23人のうち5世帯が30代、子どもも4人いて、若い移住者や子どもたちが増えてきています。
無農薬の米作りや狩猟、藤織りや紙すきなどの手仕事を生業(ナリワイ)にする移住者が、村びとと共に暮らしており、春夏秋冬、季節を通じて自然と共に生きる暮らしが、今なお色濃く残っています。不便で厳しいこともあるけれど、だからこそ「豊かさ」に気付かせてくれる、だからこそ村人同士協力し合う精神が息づく、そんな魅力のある集落、上世屋。


村の暮らしを受け継ぐ、米づくり

ーー上世屋で米づくりをする人たちのかっこよさを感じて、この村で暮らしたいと思うようになったという愛生さん。上世屋での米づくりの魅力はなんですか?

愛生さん:上世屋での米づくりは、地域の風土を活かし、冷水が直接田んぼに入るのを防ぐコナワや、雨の多い気候にも乾きやすい9段組(4メートルほど)の高さの稲木干しなど、昔ながらのやり方で作られています。その分、急な斜面の草刈りなど、手間がかかる部分もあります。我が家では、化学肥料や農薬を使わない有機栽培を行っているので、除草も行います。棚田なので、大きな機械が使えず、歩行型の田植え機や稲刈機など労力や時間のかかる作業も多いです。
とても非効率ですが、だからこそ、村の人たち同士の助け合いが必要で、協力しあう豊かなコミュニティが続いてきたのだと思います。小さな棚田でのお米づくりが、村の暮らしぶりを守ってきたと思います。

  • ▲秋に行われる稲木干しの光景。手間ひまかけて作られた上世屋のお米の味は、また格別です。

ーーどうして「棚田をナリワウ学校」を始められたんですか?

愛生さん:村の人の暮らしを受け継ぐという意味でも、ここの米づくりを「ナリワイ」にしたい人に来て欲しいという想いがあって。そうすれば、米づくりを通した豊かなコミュニティなどもつなげていくことができる。そのために、ここで勉強会や体験会をするようになりました。
棚田をナリワウ学校」は、今年は新型コロナウィルスの影響で毎月開催・募集という形になりましたが、本来は年間を通した連続講座として企画しています。春から1年通して参加してもらうことで、なんとなくでも上世屋の田んぼのこと、暮らしのことを掴んでもらえるのではないかと思っています。

共に働き共に暮らす、村人になるインターン

ーー愛生さんは、米作りの他に、「上世屋獣肉店」としてジビエ処理施設を開業され、猟から解体、精肉、販売までを一貫して行っておられるんですよね。

愛生さん:そうなんです。実は今、一緒に猟師・ジビエ施設の作業をやってくれる人も探しています!
狩猟免許を持っていなくても、ジビエを捌くだけでもいいですし、もちろん狩猟したい方も大歓迎です。とにかく、狩猟や美味しいお肉への思いがあることが1番大切。

ーー上世屋でのジビエ施設運営の特徴はありますか?

愛生さん:ジビエの処理施設は全国に600箇所以上ありますが、上世屋獣肉店の場合は、ジビエだけでなく、一緒に農業もして無農薬のお米を作りながら、狩猟もやっていくことができます。
狩猟は、いつどれだけ獲れるか分からない不安定な仕事です。今日はたくさん獲れても、明日はゼロかもしれない。なので、もう1つ別の「ナリワイ」を持っていると、無理なく運営できると思います。

村人になるインターン」は通年やっています。狩猟をナリワイとしつつ、上世屋への移住を本気で検討されている方には、ぜひ一度来てほしいです!

▲上世屋の自然の中で育まれた小山さんのジビエは、臭みがなく、とても美味しいと評判。

ーー「村人になるインターン」とは、どのようなものなんですか?

有美恵さん:この村の魅力を、この村で暮らして、「ナリワイ」をしている人たちから感じてもらえるように、そういう人たちを紹介していきたいと思ったんです。地域の人からしても、「ちょっと仕事を手伝ってもらえて助かる」、移住希望者からしたら、一緒に仕事をする中で、「地域で暮らすってこういうことなんだな」と見えてくる。

狩猟以外にも、来る人のニーズに合わせて、「それだったらこの人かな」と臨機応変に村の人を紹介しています。夜はセヤハウスで村のみんなとご飯を食べながら、わいわい交流もできるので、移住のイメージをより膨らませてもらえるのではないかと思っています。

豊かな自然と豊かな人間関係の中で育む、子育て

ーー子育て世代に向けたイベントも企画されているんですね!

有美恵さん:子どもを野に放ちたい方、田舎で子育てしたい方に、上世屋のことを知ってもらえるようなイベントをもっと企画していきたいと思っています。

ーー小山さんご自身がここで子育てを経験しているからこそ、やはりそう思われるのでしょうか?

愛生さん:そうですね。実際本当に子育てはしやすいと思っています。放っておいても村の人の家に行って、勝手に遊んでいるし、村に育ててもらっていると感じられるのはいいですよ!
二人とも稲刈りとか田植えで忙しい時は、村の人が助けてくれるし、意外と保育所や小学校までも車で10分で行けるんです。

有美恵さん:「田舎に行くと教育の選択肢が少なくなってしまうんじゃないか」と心配される方もいます。たしかにそういう部分もあると思います。でも、豊かな資源を活かして「新しいこと」を作りだすこともできます。

例えば、最寄りの小学校には、学童保育がありません。でも、実際地域を見てみると、先生や保護者が協力して、学校や家庭で子どもを遅い時間まで見てくれています。おかげで、共働きしている家族も、なんとかやりくりできています。

そういうつながりって、人数も少ないし顔も見えて、誰が困っているのかが分かっているからこそ、できることだと思うんです。最初に用意されている選択肢は少ないかもしれませんが、「新しいこと」を始めようと提案した時に、「じゃあやろう!」と協力してくれる人たちが、ここにはいます。

有美恵さん:うちも、週末に子どもと一緒にできない仕事の時は、村の人に子守をお願いすることがあります。「みといてあげるで」と快く受けてくれます。そう言っていただけるのは、私たちのように核家族で移住している者にとってはとてもありがたいです。

困っていれば、必要なものがあれば、みんなで協力して作り出すことができる。そういう魅力、面白さが、世屋(※1)にはあると思います。「ないものをつくれること」に面白さを感じる人は、世屋はすごく向いていると思います!

(※1 世屋とは、上世屋の他、下世屋、松尾、畑、木子の5集落から成る地域)

村を”受け継ぐ”ということ

有美恵さん:私たちは、もう上世屋と出会って10年以上経ちます。私たちが見て「いい」と思った時の上世屋と今は少し違ってきています。以前はこの村でも高齢化が進んでいたんですが、今は逆にご年配の方が貴重なんです。80歳以上となるとおばあちゃんが今は1人だけ。でもあの頃は、おじいちゃんおばあちゃんもたくさんいて、そういう村の人たちの生き方を見て、すごく憧れました。

でも、今移住してきた人たちは、そういう上世屋は見ていないんです。上世屋のことを「いい」と思ってくれているところも、きっと違う。

この10年で村も変化しているし、移住者の想いも変化している中で、「じゃあ、何が上世屋なんだろう」ということを、考えていかなければいけないなと感じています。
私たちは、村のおじいちゃんおばあちゃんからいろいろなことを教わってきたけど、今は私たちに教えてくれた人たちはもういない。自分たちが教わったことを、次は自分たちが伝えられる番にならないといけないなと思っています。

愛生さん:村の人に憧れて、僕らは移住してきました。でも今は、僕らの暮らしを紹介した上世屋のHPなどを見た人たちが、来てくれている。だから、定住へとつながる過程で欠かせない「村の人に受け入れてもらう」ステップで、1つ間があるんです。
僕らが村の人たちに教えてもらった暮らし方や価値観を移住してくる人にも伝えていかないと、根本の部分で違うかたちの村になってしまうんじゃないかという危機感もあります。

有美恵さん:それぞれが思っている上世屋はそれぞれでいいのですが、でも「村としてあり続けるには何が大事なのか」を話していかないと、村じゃなくなってしまう。
移住者が多様化してきている分、「上世屋を引き継ぐってなんだろう」とみんなで考えています。

ーー最後に、小山ご夫妻にとって、上世屋の1番の魅力はなんですか?

有美恵さん: 「村であること」です。
私たちは、ここで生まれ育ってはいないから、感覚的に知らないこともたくさんあるのですが、ここに住む先輩たちがいて、ちゃんと叱ってくれたり、「こうやで」って教えてくれる人たちがいる。
そういう関係のある「村」って、すごくいいなと思っています。村というコミュニティの中で”生きさせてもらっている”っていうのは、すごくありがたいなと。

あと、丹後(※2)というコミュニティの存在も大きいです。「○○やりたいと思ってるんだ」と言うと「じゃあ、あの人に会ってみたらいいよ」って紹介してもらえて、地域ごとの隔たりなく、つながっていけるのが丹後のよさ。丹後コミュニティはやはり強いし、面白い人がたくさんいます。
世屋で暮らして、世屋の仲間ももちろん増えてきているけど、困ったときには、丹後がある。丹後コミュニティがあることも、上世屋の魅力の1つです。

(※2 京都府北部の宮津市、京丹後市、与謝野町、伊根町を含む地域)

力強くたくましく、そして温かく優しく生きている小山さんご夫妻。都会で生活していたら、感じたことのないような新しい世界が、上世屋には広がっています。
自然のサイクルと共に生きる村の人たちのナリワイや暮らし、生き方を学ぶ中で、移住を考えてみるのはいかがでしょうか?

 

▶︎HP:「小さく生きてきた。」
▶︎20人の村のオンラインショップ:「世屋村」
▶︎Facebookページ:「丹後のおへそ、世屋村。」

今回ご紹介したプロジェクト
▶︎棚田をナリワウ学校
▶︎村人になるインターン(▶︎村人になるインターン「狩猟」
▶︎里山自主保育セヤノコ

あわせて読みたい
▶︎小山さんの過去の記事:「棚田と狩猟で生きる」
▶︎上世屋の米づくり:チャントセヤファームの無農薬・稲木干しの米づくり
▶︎小山さんの狩猟への想い:「狩猟をナリワウ」

(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)